こんにちは。会議通訳のあひるです。私は海外経験もなく,社会人になってから英語を学習しました。その経験からここまで『初学者ほど自分の考えを英語にすることに注力すべき』とお伝えしてきましたが,如何でしょう,進んでいますか?
いざ英語にしようとすると,わからないことも出てきたのではないでしょうか。そんな疑問が出てきた方へ,今日は英文法の取り組み方をお伝えします。
文法事項にも濃淡がある
文法事項には濃淡があります。この点を初めにお話させてください。
たとえば,品詞。『名詞の性質』や『動詞の性質』といった知識は英語学習に必須ですが,ある意味『英語のテキストを読むための知識』のような側面があります。つまり,これ自体が目的ではありません。
たとえば,名詞の可算・不可算。いわゆる数えられる名詞・数えられない名詞というやつです。これも英語の習得には必須なのですが,どうしても理屈で割り切れない部分もあります。こういうものは初めから完璧にしようとせず,学習を継続する過程で徐々に知識を上塗りしていくのが効果的です。
たとえば仮定法。いろいろ応用表現はあるものの,結局『実際ありえる話かどうか』がポイントです。ここを間違えると,『文法的には正しいが異なる意図で伝わる文章』ができたりします。こういうものは初めからしっかり押さえておきたい。
如何でしょう。このように文法には『英語学習自体のために必要なもの』,『時間をかけて叙々に体得していくのが効果的なもの』,『初めにしっかり押さえておきたいもの』,様々な濃淡が存在します。これを初めから順に学習していくとどうなるでしょう?
気合を入れてテキストを開きます。まず,英語の説明に必要な品詞や文型から始まります。なにせここは用語の定義を説明する段階ですから読みにくい。なんとか乗り越えたところで名詞の可算・不可算。鉛筆は数えられるけど紙は数えられない,ホットケーキは数えられるけどパンは数えられない等々やっているうち,仮定法とかいく前に心折れませんか?
オススメは,まず全体像を俯瞰した上で必要なところからアプローチしていくことです。
頭の中に見取り図を描く
まずはじめに,英文法の全体像・見取り図を頭に入れます。目的は主に2つ。
①本当に必要なところからアプローチするため。これが今お話ししたところです。
そして地味に重要なのが,
②『やってもやっても知らないことが次々に出てくる』を避けるため。
これ本当にめげますよね。でも大丈夫,英語圏に生まれたひとは何の苦もなく話している言葉です。まずはこういう無駄にめげる要因を潰していきましょう。
まず,薄くて読みやすく,基礎から全体を解説してくれる文法書を1冊,一気に読み通します。具体的なテキストの選び方は次回お話ししますが,できれば1,2日,どんなに長くても1週間もあれば1度目が読み終わるものを選びます。
この段階で理解する必要はありません,沼にはまります。唯一にして最大の目的は『最後まで目をとおして全体像を把握する』こと。つまり各項目を理解しなくていいのですが,どこに何が書いてあるか,その全体像は意識してください。『学習計画を立てる』イメージです。
さて,英文法は何を勉強しなきゃいけないんだろう。そんな感じでページをめくっていきます。
『時制の中でも完了形は面倒そうだな,ここはしっかり読まなきゃ』『そっか,仮定法ってこういうことなのか!』『分詞構文って意味多いな,ここは時間かかるな』,こんな感じでいわゆる『要注意ポイント』にどんどん印をつけていきます。
これはたとえば,自分が疑問に思っていたので後で読み直したいところ,時間をかけてしっかり勉強したいところ,気づきのあったところなどです。これを後から参照できるようにどんどん印をつけていくんです。
とはいえ何度か読んでいけば割とすぐに解決することもありますから,後から消せる方法がオススメです。私はふせんを貼るか,ページの下を折っていました。
こうしてどんどん読み進めます。理想は1,2日で1回です。1度で終わらせず,最低でも3,4周,できれば7,8回は読み直しましょう。1周1,2日ですから集中して1,2週間のイメージです。
1回読むのに10日かけるくらいなら『超適当に1日で読み切る』を10回繰り返した方が効果的です。『まず全体像を把握することで”知らないことが次々出てくる状態”を避けること』が目的だからです。始めは無理矢理でも読み切ってしまって,『とりあえず何をしなければいけないのかはわかった』状態を作ってください。
時間がかかるとしたら,(1)本の選択がふさわしくないか,(2)理解しようとしているからだと思います。
私は趣味で,文字どおりゼロからフランス語やロシア語を始める時も同じ方法をとりました。『知識がなくて読み進められない』と感じるのはテキスト選択が間違えています。より初心者向けの本を選びましょう(テキスト選びは次回紹介します)。
そしてアウトプット⇄文法の往復を
こうすると頭の中に英文法全体の見取り図ができます。具体的にはわからないことが出てきた時,手持ちのテキストのどこを参照すればいいか,目星がつくようになります。それが今回の目的です。そして今後わからない文法事項が出てきたら都度調べ,学習していきます。
既にアウトプット練習に取り組んでいて,『あ,この前悩んだ所だ!』というポイントが出てきた方,試しにその章をしっかり読んでみてください。疑問ありきで読むと知識の入り方が格段に違うことが実感できると思います。
この全体像を頭に入れた状態でアウトプット練習に戻り,疑問が出たらこのテキストに戻るというサイクルを回してみてください。おそらく,しばらくするとこの『薄くて読みやすい』テキストだけでは物足りず,さらに詳しいものが必要になるかと思います。
その時点ではじめて参照用,いわゆる辞書的に使う次のテキストを準備します。このように,ガッツリ使う本格的なテキストはある程度疑問が出てきたところで選ぶことをおすすめします。
学習内容全体を把握する前,『なんだかよくわからない』時点で本格的なテキストを選ぼうとしても内容が理解できないので,自分にとって読みやすいものが判断できません。
しかし具体的疑問が出てきた時点で書店に足を運び,自分のわからない箇所の解説を読み比べてみてください。テキストをきちんと評価でき,ご自身にあった,使いやすい,そして続けられるテキストを選べます。これもとても大切です。
『続けられるやり方』に心を配る
やはり,『やめないやり方』に気を配ることはとても大切です。英文法も,いま必要なものから始めることで,成果を早く実感しましょう。
同時に,可算不可算のように沼にハマりがちなところは『必要な時に必要なことだけを都度調べる』,ある意味割り切ったやり方も一案です。つまり,パンと言いたい時がきたら初めてパンの可算・不可算を調べ,ホットケーキと言いたい時がきたら初めてホットケーキの可算・不可算を調べ,それ以上深入りしない,という意味です。
それでも学習を継続し,日々触れる英語が増え,インプットが加速してくると,breadsと言われれば自然と『ん?』と思える日がきます,本当に。
誤解のないよう申し添えますが,細かい知識も大事です。しかし英語で覚えるべきことは山とあり,適切な順番というものもまた存在します。
森を俯瞰する前に木の枝にハマると学習が進まず,やめてしまうきっかけにもなります。そしてやめたらそこで止まります。逆に細々でも続けていると日々触れる英文も増え,英語にも慣れ,それによって今までわからなかったことも自然と頭に入ってきたりします。
今回は文法攻略についてお話しましたが,この『続けられるやり方を意識する』という点も,少しでも伝わっていたら嬉しいです。一緒に頑張りましょう, Bon Voyage!