こんにちは。会議通訳のあひるです。私は海外経験もなく,社会人になってから英語を学習しました。その経験を踏まえてリスニング攻略法をお伝えする2回目。今回は短文を聞き取れるようになるために必要なことを書いていきます。
目指すべき姿
全ての基礎となる,『短文が聞き取れない』。これは様々な要素が絡み合っています。
例えば音が聞き取れないのは単に音を知らないから。長くなると突然聞こえなくなるのは知識かスピードの問題。
しかし短文が聞き取れない場合,そもそも英語の音のつながりやリズムに慣れていない,単語レベルは聞き取れても単語同士が繋がらない(=構文を構築できない),文法を知らない,スピードについていけない,実に様々な要因が考えられます。
しかし逆にいうと,ここをクリアできると一気に先が見えてきます。
この段階で最終的に目指すべき姿は『短文を聞き,同じスピードで一緒に声に出しながら(シャドーイング,オーバーラッピングなどと呼ばれるものです)同時に頭で意味も理解できる』です。
ごく個人的な経験ですが,ここは『初心者』から『中級』への大きなターニングポイントとなる段階なので,ぜひ頑張りましょう。
まずは自分にあったテキストを
この段階でベストな教材は,ご自身にとって『読めばすぐ理解できるけど話されたら聞き取れない』ものです。
というのは『短文が聞き取れない』は様々な要因が絡みあっているので,難しい素材を選んでしまうと何が原因で理解できないのか,切り分けられないからです。文法構造が複雑でわからないのか?単語や表現が難しすぎるのか?単純に音が聞き取れないだけなのか?
それを切り分けるため,『読めばわかるけ聞くとわからない』,つまり明確にリスニングの問題だと切り分けられるものを選びましょう。
シャドーイングの落とし穴
冒頭,この段階で最終的に目指すべき姿は『短文を聞き,同じスピードで一緒に声に出しながら同時に頭で意味も理解できる』だとお伝えしました。しかし,始めからシャドーイングをしてはいけません。
意味・構成を充分理解していないものを単純に音だけ追おうとすると,『聞き取れた音のみが頭の中で日本語に変換され,それを繋げたよくわからない音の羅列』になります。本来シャドーイングで習得すべく英語のリズムを習得できません。伸びやかな音やたっぷりとした長い子音,単語同士の自然な音のつながりなどです。
シャドーイングは英文を充分理解し,ナチュラルスピードで頭から理解できるようになった段階で取り組んで初めて,とても有効な練習となります。
具体例を挙げてみましょう。I don’t want to go to school, Daddy! (お父さん学校行きたくない!)という英文があるとします。これを意味がわからないまま音だけ聞くとどうなるでしょう。
まず,日本語は子音だけの発音がないので,特別な訓練をしていないと子音のみの音は聞き取れません。そこを消すと,I don(’t) wan(t) to go to (s)choo(l), Daddy! になります。
そして英語は日本語に比べて抑揚が強いので,アクセントのある音が日本語の何倍も強く発音されます。すると聞こえるのはI don(’t) wan(t) to go to (s)choo(l), Daddy! ,こんな感じでしょうか。
そして人間の脳の性質として,英語の発音を知らなければ知っている日本語の音に置き換えます。
さて。これを素直に『(本人が)聞こえたまま』口に出すとどうなるでしょうか。
多分,よくてこんな感じです:ァドンゥォゴーク,ダ!これは避けましょう。このような英語がダメだというより,一度変な癖がつくと,もし後から矯正したくなった時に大変な手間がかかるからです。
実はこれ,ほぼほぼ私の実体験です。反省を込めて繰り返しますが,一度身についたクセを矯正するのは,ゼロから体得する何倍もの労力がかかります。しかし言うまでもありませんが,英文全体の構造がしっかり頭に入り,ナチュラルスピードで理解できるようになってからシャドーイングを行うのは大変有益です。
目指すべきステップ
私は通訳学校に行ってから(かなり苦労して)矯正に取り組みましたが,ぜひ皆さんは正しい段階を踏んでください。ひとつできるようになったら次に行く。具体的な練習法は次回以降とし,まずは到達目標を細かく分けると以下のようになります。
①文章の中身をしっかり理解する
②文章を黙読し,読みながら同じスピードで頭で意味を理解できる
(②’自分のペースで音読し,読みながら同じスピードで頭で意味を理解できる)
③音源を聞いて,同じスピードで頭で意味を理解できる
④音源を聞いて,同じスピードで一緒に声に出しながら同時に意味を理解できる
①は頭で理解するところですから,目で読み,必要であれば単語や文法を調べて終了,すぐ終わります(というか,これがすぐ終わるレベルの教材を選んでください)。
②と②’は理解した英文を,頭から処理できるようになる段階です。ここでは黙読であれ音読であれ,自分のペースで頭から英語の語順に沿って理解できるよう練習します。
これができるようになったら③。英語を頭から理解するプロセスを,『自分のペース』から『自然なスピード』に底上げします。
そして仕上げの④は,自分でも話せるようになる土台を固めるところです。
次回から,テキスト選び→具体的な練習方法と進みます。一緒に頑張りましょう, Bon Voyage!