カラーバス効果で学びが加速するしくみ

英語に自信を持てないあなたへ

こんにちは。会議通訳のあひるです。海外経験もなく社会人になってから英語を学習する中,試行錯誤しながら試してきたことをお伝えしています。

中でも前回,『頭の中に常にアンテナを張っておく』大切さをお話しました。今回は,これを少し深掘りしていきます。

カラーバス効果

突然ですが,『カラーバス効果』ってご存知ですか?なにかに意識を向けることで,無意識に関連する情報が目に入ってくるようになる効果のことです。

語源は『color(色)をbath(浴びる)効果』で,例えば『今日は赤に注目しよう』と意識しているとやたら赤いものが目につくようになるという,アレです。

しかしこの効果は色に限りません。言葉や情報などあらゆる事柄に対して起きます。人間の脳は,目の前にあることも興味がなければごく簡単にスルーします。興味があることしか頭に入ってこないんです。

これを英語学習で考えてみましょう。ここまで私はしつこいくらい,英語の初学者はまず,考えていることを英語にしようとしてみることが大切だと繰り返してきました。

実は私自身,たまたま自分に合っていた方法はこうだっただけだ思っていました。しかし今になって振り返ると,まさにこのカラーバス効果が効いていたのだと思います。

頭の疑問符が答えを引き寄せる

例えば前回お勧めした英文日記。始めは思うように英語にできなくても,『あれ?○○って英語でなんていうんだろう?』という疑問符が常に頭にある状態を作ることが大切,とお話しました。

英語を学習する以上,テキストや素材(英文記事や新聞,洋書など)での学習は必要です。そこには本来,上手に使えばとても役に立つ文法事項や表現がたくさん載っています。特に英語教材は競争が激しいですから,ある程度売れているものはやはり宝の山が多いです。

しかし,『○○って英語でなんて言うんだろう?』という自発的で能動的な疑問もないままテキストありきの学習をしていると,どんなに使える表現に会っても人間の脳は簡単にスルーします。ただの無味乾燥な文法事項の羅列になってしまうんです。

しかし,頭のほんの隅の隅にでも,とても具体的な『○○って英語でなんて言うんだろう?』というアンテナがを張り巡らせていると,使える表現に会った瞬間に脳は反応します。それにより,全く同じ教材を開いていても,人によって受け取ることができる質も量も大きく変わるのです。

また,これはあくまで個人的な印象ですが,まずはある程度自分で取り組んでみることで,『やっぱり文法を知らないとダメだ』『表現を知らないとダメだ』,こういう危機感が醸成されていると同様の効果があらわれてより深く身につくように感じます。

逆にこういった危機感も問題意識もなく,ただ受動的にテキストを開いていても,やはり吸収できる内容には限度があると感じます。

学びが加速する仕組み

そしてこの効果は学びが進み,英語に触れる機会が増えるほど加速します。それだけ疑問に思う機会も増えるからです。

会議通訳中がその最たるもの。私は『会議の参加者が,通訳がいることを忘れて話せる』通訳こそが最高だと思っています。だから参加者が私を意識せずに自然にお話しされていると,とても嬉しく思います。

しかしそれはそれとして,『今のは英語でなんて言うのがベストだったんだろう』と悩むのは日常茶飯事。

そんな時,まずは先日お話したように元の日本語を整理して『とりあえず伝わる訳』は出すのですが(同時通訳で迷ってるヒマはありません!),この『◯◯って英語でなんて言うんだろう?』がしばらく心に残ります。

そうすると,普段の仕事や生活で似たような表現が出てくるとどんどんアンテナに引っかかるようになります。『そっか,こう言えば良かったのか!』と。

例をひとつ。いつだったかしばらく,『日本語の「空気読め」って,結局英語だと何が一番近いんだろう?』とぼんやり思いを巡らせていたことがありました。それからかなり経ったある日,息子が保育園に行こうとするまさにその瞬間,粗相をしていました。そして夫が一言,『Hey! Timing! Timing!』。

すると,それまで全く意識していないのに,その瞬間『そっかコレか!』と思い出すんです。そう,『空気読め』って要はタイミングを把握しろってことですよね。

このように様々なアンテナが張り巡らされた状態になると,一気に学びが加速します。

例えば英語で一定のレベルを超えるには読む練習が欠かせないのですが,頭がこの状態で洋書などを読んでいると,本当にいろんな表現がどんどん引っかかるようになります。

好循環を味方にしよう

前回は英文日記をオススメしましたが,やはり『自分で何かを英語で表現しようとしてみる』,疑問を持つためにはやはりこれが一番です。

ぜひ今度時間をとって,いつも考えていること,関心のあること,将来の夢,なんでもいいので腰を据えて英語にしてみてください。普段私たちは実に雑多にいろいろと思い悩んでいるような気がしますが,いざまとめてみると意外と大した分量にはならないものです。

それをあれこれ考える過程で,ぜひ『あれ,○○って英語でなんていうんだろう?』のアンテナを大いに張り巡らせておいて欲しいのです。そうすると,たとえその瞬間はうまく英語にならなくても,学習を継続していって新しい表現に出会った時,その吸収度がグンと変わります。この脳の仕組みをぜひ活用していきましょう。

騙されたと思って一度やってみてください。効きますから,本当に。一緒に頑張りましょう,Bon Voyage!