英語で表現するための超!具体的プロセス

英語に自信を持てないあなたへ

こんにちは。会議通訳のあひるです。前回,初学者はまず日々考えていることを英語で表現する練習をお勧めしてきました。

今回はその具体的手順をお話しします。私自身,海外経験もないまま社会人になってから英語を勉強して会議通訳になりましたが,あらゆることを試して試行錯誤してきた方法です。

最も重要なのは今考えていることをそのまま英語にしようと考えるのではなく,まずは自分の英語力でも表現できるレベルまでシンプルにすることです。

これは初学者に向かって『英語は英語で考えよう』などというような訳のわからない話とは全く違います。

頭のモヤモヤを英語にするために

仮に今のあなたの英語力が,日本語の4割程度だったとします。英語を勉強しようとする時,おそらくあなたはこのように↓,ご自身の英語力を日本語並に引き上げようと考えるのではないでしょうか。

これ↑が出来れば理想ですけど,とんでもなく時間がかかる上にほぼ間違いなく白馬の王子を追う羽目になります(→10/1)。最速で英語運用能力を身につけるために必要なのはこの↓ステップです。

それにより,

①自分の英語力で言いたいことが言えるようになる

だけでなく,

極めてわかりやすい日本語を話せるようになる

効果があり,これは単なる英語力云々を超えた本質的なコミュニケーション能力,日本語の話し方をも大きく底上げします,本当に。それでは,具体的に考えていきましょう。

それではやってみよう!具体的プロセス

私事で恐縮ですが今朝ちょうど息子が人参を残そうとしていたもので,私は『野菜食わんとかありえないんだよ💢』と少々暴れたばかりです。さて,これを英語にしてみましょう。

『野菜食わんとかありえない』,これそのまま英語にしようとするとどうでしょう。Googleで『ありえない 英語』と検索すると次のように出てきました(2024年11月現在)。

しかし息子は実際に人参を残そうとしていた訳ですから,『Impossible (ありえない,起こりえない,存在しえない)』ではないですよね?

英語を話そうと思った時,このように『自分がいつも日本語で(適当に)言っている〇〇〇って,どういうことなんだろう?』と都度考える習慣をつけてほしいのです。

この『ありえない』も,英語云々以前にまず得意の日本語で整理していきましょう。

この文脈での『ありえない』ってどういうことでしょう。野菜を食べないことは『許されない』『受け入れられない』といったところでしょうか。

ここではひとつの目安として,『単純なオンライン辞書/翻訳ツールでも絶対に間違いなく訳せる日本語』を目指していくことをお勧めします。

『野菜を食べないことは受け入れられない/許されない』であれば,辞書や基本的なインターネットツールの力を借りればどうにか英語にできるのではないでしょうか。

Googleで『受け入れる 英語』と検索したら,このとおり出てきました。

そうです。We can’t accept you don’t eat vegetables, なら本来の意味になります。まぁ実際この状況でしたら Hey! Eat VEGETABLES!(野菜を食え!)で充分なんですけど,あくまでわかりやすくご説明するための例とご理解ください。

さて,慣用句はどうでしょう。インターネットで検索すれば,もしくは書店などに行けば,様々な表現が出てきます。しかも,『英語らしい表現』とか『ネイティブならこう言う!』とか高度なものがたくさん。しかし,(少なくとも私は)こういうものが覚えられないからずっと英語が苦手だったんです。

こういうものもそのまま英語にしようとするのではなく,まずは一度,得意の日本語で自分が英語にできるレベルまで徹底的に落とし込んでいきましょう。

母親に厳しく叱られた息子は,背に腹は代えられず人参を食べていました。この『背に腹は代えられない』,とりあえずGoogle先生に聞いてみましょう(以下はすべて2024年11月現在の結果です)。

文字どおり『お腹と背中は交代できない』という英文が出てきました。こんなん出されても困りますけどGoogleを責めるべきではありません。こちらの入力に誤解の余地があるからこのような結果が出るのです。どんな単純なツールでも絶対に間違えようのないレベルまで,日本語をシンプルにしましょう。

サイトによっては実際の意味に近いような表現も出てきます。個人のサイトなどは角が立つので,ここでは辞書サイトをいくつか見てみましょう。

英辞郎さん:

仰るとおりです。しかし当時の私がこれをすんなり覚えられたか?まず無理です。このようなものをいちいち覚えれたら英語で苦労してないという話です,本当に。

weblioさん:

これも仰るとおりですね。『そうか英語ではオムレツと表現するのかー』というのは元々語学に興味があるような方にはとても面白く,いい勉強になるでしょう。しかし繰り返しますが,私はこういうものが覚えられないから苦手だったんです。

それより,これも得意の日本語で整理してみましょう。『背に腹は代えられない』って,そもそもどういう意味ですか?必要なら国語辞典や類語辞典,もしくはネットで検索してもいいかもしれません。

言ってみれば『本当は嫌だけど仕方ない』ということですよね。英語運用能力というのは試験に出る慣用句を覚えることではありません。少なくとも初学者の最優先事項ではありません。自分の言いたいことをなんとかまともな英語で伝える力です。それでは,これを英語にしてみましょう。

今朝の息子は本来人参なんて食べたくなかった。彼にとってそれは大きな犠牲です。しかし母親はこのまま食べずに許してくれそうにはない,むしろ更なる犠牲が降ってきそう。それよりは人参食べたほうがいいかもしれない,食べるしかない。このように日本語で整理していくんです。

今回の『背に腹は代えられず人参を食べた』,言い方は無限にあるでしょうが,とりあえず『嫌だけど人参食べた(I hate carrots but I ate it)』で充分伝わるのではないでしょうか。ちょっと構文を駆使して『人参を食べるしかなかった(I had no other choice but to eat carrots)』などとしてみると,いい勉強になるかもしれません。

このくらいまで日本語をシンプルにできれば,なんとかご自身で辞書やネットのツールを使いながら英語にしようという気が起きるのではないでしょうか。ちなみにこの『食べるしかなかった』,英辞郎さんならこんな感じで教えてくれます。

如何でしょう。今回は説明のためかなり単純な例でお話しましたが,『まずは考えていることを,英語にしやすいシンプルな日本語にする』というイメージは伝わりましたか?

英語力より真のコミュニケーション能力を

私は英語がとても苦手だったからこそ,試行錯誤の末にこの方法にたどり着きました。当時は普段考えている日本語そのままでは到底英語にできなかったからです。

しかしこのスキルが身につくと,自分の思考もクリアになり,日本語もとてもわかりやすくなります。

さらによくわからない日本語を聞いた時も,自然と頭の中で噛み砕ける能力・習慣が身につきます。これは通訳をする上でとても役に立ちますが,しかし通訳でなくとも『わかりやすく話し,相手の話をわかりやすくまとめる』スキルが身につくのはとてもオイシイのではないでしょうか。

このプロセスを身に着けるため,やはりいきなり英語に飛びつく前に,まずは『思考をシンプルにする』練習をしてほしいのです。

よく,『中学英語だけで英会話はできる』といった類の話を聞きませんか?これには完全に同意しつつ,少し言葉を補足させてください。言ってみれば,『自分の考えを中学英語でも表現できるレベルまでシンプルにすることが,英語で話すカギ』となるのです。

これができれば,当然のことながら中学英語で充分言いたいことは伝えられ,さらに,より本質的なメッセージの伝え方,コミュニケーション力が大幅に向上します。このステップが慣れるまでは結構大変なのですが,後々本当に大きな武器になります。私も英語学習を始めた頃は寝ても覚めても日本語ばかり考えていました。

ちなみにこれは完全に個人的な感覚ですが,英語力が今の日本語の4割もあれば,日本語を調整することでそこそこの英語になると思います。2,3割だと少し英語力を底上げしないと難しい。具体的方法は近々書きます。

如何でしょう。思考を具体的に英語にしていくプロセス,イメージ湧きましたか?そして簡略化した日本語とはいえ,いざ英語にしようとするとそこそこ悩むはずです。その,ああでもないこうでもないと英語を考えたり調べたりするプロセスを通じて,あなたの英語力自体も向上していきます。そしてより複雑なことも言えるようになる,この好循環が生まれます。

次回以降,ここまでを踏まえて実際に私が初学者の頃にやっていたことをお伝えしていきます。一緒に頑張りましょう,Bon Voyage!