英語が苦手だった私の転機

英語に自信を持てないあなたへ

こんにちは。会議通訳のあひるです。私は海外経験もなく,社会人になってから英語を学習して会議通訳になりました。

英語を始めた当初はそもそも仕事で使えるようなレベルではなかったので,もっぱら身の回りのこと,いわゆる日常会話,ビジネスとは程遠い内容を学習していました。

しかしそれでも,当時身につけたことが間違いなく現在の私の核になっています。あらゆることを試してきましたが,今回と次回はその頃の私に特に効いた経験をお話します。

転機となった友人との会話

ひとつめが,趣味の合う話相手をみつけ,しっかり準備をして話をする機会を得たこと。今振り返ると,これは外国語で会話をするとはどういうことかを身をもって体感する大きな転機となりました。

当時友人のつながりで会った,とても趣味のあう外国人の友人がいました。時々食事に行ったりしていたのですが,毎回必ず1つづつ,かなり深くまで話せるトピックを準備していきました。

私は暇があると本を読むか音楽を聴いていますが,彼女も同じような趣味を持っていました。

趣味が近いので,当時のおぼつかない英語力でも訥々と話していると,何かしら『わかる!』といったポイントが出てきます。同じ本を読んでいたり,同じものを聴いていたり。

例えば会話のふとした流れで彼女が『自分はベートーヴェンなら交響曲が好きだけどブラームスならカルテットがいいんだよね』などと言っていて,そこで『わかる!』とピタリ思ったとします。

そうしたら次までに,その1点に絞って自分の考えをきちんと伝えられるように整理していくんです。

そう,ベートーヴェンの交響曲は素晴らしい。でも,バイオリンやチェロなどの名曲も多いのに何故自分はやっぱり交響曲だと思ったのか。ピアノソナタにも交響曲に通ずるようなモチーフがたくさん出てくるけれど,何が違うのか。そもそもブラームスってかなりベートーヴェンの影響を受けていたのに,どうしてああいう作風の差となったのか・・・。

かなり趣味的な例になってしまいましたが,如何でしょう。普段当たり前のように思っていることも,いざ説明しようとするとあれ?と思うこと,ありませんか?

それが日本語だと,下手に語彙力があるだけに『なんとなく』でもやり過ごせてしまいます。しかしこれを限られた英語力で表現しようとすると,不整合がどんどん出てきます。

これを自分の中でしっかり噛み砕き,思考を整理してシンプルな英語で話せるようにしていくんです。

そして迎える次回,『そう言えば前回,こんなことを言っていたけれど…』と少し話してみます。そうすると,何せ趣味は似ていますからまた盛り上がり,また話が広がります。

当時は普段少しでも話が変わると太刀打ちできなくなっていたのですが,ここでは自分が好きなテーマで,しかもかなり集中して考えていた内容ですから,少しくらい話が広がっても割と楽しく会話ができます。

するとまた次の『わかるー!』ポイントが出てきますから,それを次回までに深掘りします。

外国語コミュニケーションの本質

当時は意識していませんでしたが,今振り返っても外国語コミュニケーションの本質とでも言うべき要素が本当にたくさん詰まっていたと思います。

  1. 準備過程で自然に『英語にする以前に自分の思考をシンプルにする』というやり方,習慣が身についたこと
  2. 趣味の合う相手なので打てば響き,回を重ねるごとに英語自体,そして自分の思考,その両方を深めていけたので,結果として自分に最適なペースのレベルアップができたこと
  3. 自分が好きで知っている内容なので当時の私でも会話になり,『私も英語で話せる!』という達成感と楽しさを味わい,その後の大きなモチベーションになったこと
  4. 1対1だったので『他の人たちの会話についていけない』が起きなかったこと
  5. 趣味が合うだけに,このプロセス自体をとても楽しめたこと

ちなみに当時,実際に一番時間がかかっていたのは英語以前,自分の思考を整理するプロセスです。この過程では英語力自体も向上しましたが,それより大きかったのはやはり『外国語でコミュニケーションを取るとはどういうことか』,その本質を体得できたことです。

英語講師を探す場合

如何でしょう。今回は海外経験もなく,英語が苦手だった私の転機となった経験をひとつ,ありのままお話してきました。

『そんな都合のいい話し相手は見つからないよ』と仰るかもしれません。私自身はたまたまこのような経験を経ましたが,これは相手がいなくてもこの『自分の思考を深掘りして英語にまとめていく練習』さえできれば同等の効果は得られると思います(→次回)。

しかし相手がいることが継続のモチベーションになるという側面もありますよね。そんな方は,信頼できそうな英語講師を見つけて相手になってもらうのも一案です。

その場合,仮に昔の私にアドバイスできるとしたら,以下の2点を伝えると思います。

第一に,普段からビジネスなど公的な場にふさわしい英語を使っている,もしくはそういった立場の方相手にプロとして英語を教えていた経験があること

平たく言えばネイティブなら誰でもいいというわけではない,という意味です。逆に言うと,この条件さえしっかり満たしていればネイティブでなくてもいいかもしれません。

高等教育で外国語としての英語をしっかりと系統立てて学んだ方の方が,下手なネイティブよりもずっと洗練された英語を話されることはよくあります。ちなみに上で触れた友人も母国語は英語ではなく,ヨーロッパの方でした。

そして第二に,学校などのようにカリキュラムありきではなく,あなたが話したい内容に特化して教えてくれること。

学習を進めて実際に英語を話すのは,先生ではなくあなたです。あなたのニーズに沿って,あなたが話すお手伝いをしてくれる先生をぜひ探してください。

この,英語講師の探し方と使い方。これもお伝えしたいことは山とあるので,いつかまとめたいと思っている内容です。ぜひ引き続き,一緒に頑張りましょう,Bon Voyage!