英語が苦手だった私が,初学者の頃に特に効果があったこと3選

英語に自信を持てないあなたへ

こんにちは。会議通訳のあひるです。私は海外経験もなく,社会人になってから英語を学習して会議通訳になりました。

英語を始めた当初はそもそも仕事で使えるようなレベルではなかったので,もっぱら身の回りのこと,いわゆる日常会話,ビジネスとは程遠い内容を学習していました。

しかしそれでも,当時身につけたことが間違いなく現在の私の核になっています。あらゆることを試してきましたが,今回はその頃の私に特に効いた経験を3つ,お話します。

【1】転機となった友人との会話

ひとつめが,趣味の合う話相手をみつけ,しっかり準備をして話をする機会を得たこと。今振り返ると,これは外国語で会話をするとはどういうことかを身をもって体感する大きな転機となりました。

当時友人のつながりで会った,とても趣味のあう外国人の友人がいました。時々食事に行ったりしていたのですが,毎回必ず1つづつ,かなり深くまで話せるトピックを準備していきました。

私は暇があると本を読むか音楽を聴いていますが,彼女も同じような趣味を持っていました。趣味が近いので,当時のおぼつかない英語力でも訥々と話していると,何かしら『わかる!』といったポイントが出てきます。同じ本を読んでいたり,同じものを聴いていたり。

例えば会話のふとした流れで彼女が『自分はベートーヴェンなら交響曲が好きだけどブラームスならカルテットがいいんだよね』などと言っていて,そこで『わかる!』とピタリ思ったとします。そうしたら次までに,その1点に絞って自分の考えをきちんと伝えられるように整理していくんです。

そう,ベートーヴェンの交響曲は素晴らしい。でも,バイオリンやチェロなどの名曲も多いのに何故自分はやっぱり交響曲だと思ったのか。ピアノソナタにも交響曲に通ずるようなモチーフがたくさん出てくるけれど,何が違うのか。そもそもブラームスってかなりベートーヴェンの影響を受けていたのに,どうしてああいう作風の差となったのか・・・。

かなり趣味的な例になってしまいましたが,如何でしょう。普段当たり前のように思っていることも,いざ説明しようとするとあれ?と思うこと,ありませんか?

それが日本語だと,下手に語彙力があるだけに『なんとなく』でもやり過ごせてしまいます。しかしこれを限られた英語力で表現しようとすると,不整合がどんどん出てきます。文がつながらない。これを自分の中でしっかり噛み砕き,思考を整理してシンプルな英語で話せるようにしていくんです。

そして迎える次回,『そう言えば前回,こんなことを言っていたけれど…』と少し話してみます。そうすると,何せ趣味は似ていますからまた盛り上がり,また話が広がります。当時は普段少しでも話が変わると太刀打ちできなくなっていたのですが,ここでは自分が好きなテーマで,しかもかなり集中して考えていた内容ですから,少しくらい話が広がっても割と楽しく会話ができます。するとまた次の『わかるー!』ポイントが出てきますから,それを次回までに深掘りします。

【なぜ効いたのか】外国語コミュニケーションの本質を体得したこと

当時は意識していませんでしたが,今振り返っても外国語コミュニケーションの本質とでも言うべき要素が本当にたくさん詰まっていたと思います。

  1. 準備過程で自然に『英語にする以前に自分の思考を整理にする』というやり方,習慣が身についたこと
  2. 趣味の合う相手なので打てば響き,回を重ねるごとに英語自体,そして自分の思考,その両方を深めていけたので,結果として自分に最適なペースのレベルアップができたこと
  3. 自分が好きで知っている内容なので当時の私でも会話になり,『私も英語で話せる!』という達成感と楽しさを味わい,その後の大きなモチベーションになったこと
  4. 1対1だったので『他の人たちの会話についていけない』が起きなかったこと
  5. 趣味が合うだけに,このプロセス自体をとても楽しめたこと

ちなみに当時,実際に一番時間がかかっていたのは英語以前,自分の思考を整理するプロセスです。この過程では英語力自体も向上しましたが,それより大きかったのはやはりまずは思考をシンプルにしていくことも含め,『外国語でコミュニケーションを取るとはどういうことか』,その本質を体得できたことです。

【2】妄想ひとり会話

上で私が初学者の頃,どうやって友人との会話を準備していたかをお話しました。しかしこれは裏を返せば,当時はこのくらい準備をしないと言いたいことのひとつも言えなかったんです。そのため当時は,日々何か話したり考えたりするたびにいつも『これは英語でなんて言うんだろう?』と考えていました。これが今からお話するふたつめ,妄想ひとり会話の原点です。

例えば友人と飲みに行った帰り道。気のおけない友人と会うと,仕事やら趣味やら共通の友人やら恋人やら,まぁ雑多なことばかり話しますよね。そして帰りの電車の中,その日自分が話したことを反芻しながら『あれ,英語だったらなんていうんだろう』というのをゆるく,しかしひたすら考えていきます。

パートナーの愚痴を言った気がするけど私は何が不満なんだろう。どの部分が伝えにくいか,どうしたら伝わるか・・・,そんなことをとりとめもなく考えながら,できればその会話を英語で再現しようとしてみてください。コツは本当に明日にでも英語で話すつもりで,(頭の中で)しっかりなりきって語りかけることです。

例えば仕事の帰り道。終日仕事をしていればうまく行ったことや行かなかったこと,時にはイラッとしたり上司に怒られたり,いろんなことがあるでしょう。そんな時も帰りの電車の中,1日を反芻しながら英語ならどう説明できるかをゆるく,しかしひたすら考えていきます。

上司の質問にうまく対応できなかった,何が原因だったんだろう。どの部分が伝えにくいか,どうしたら伝わるか・・・,そんなことをとりとめもなく考えながら,できればその会話を英語で再現しようとしてみてください。コツは本当に明日にでも英語で話すつもりで,(頭の中で)しっかりなりきって語りかけることです。

これがなぜ効いたのか。これも後から振り返って初めて気づいたのですが,結局次の英文日記とあわせて,(根を詰めすぎることなく)常に思考を巡らせる習慣がついたこと,これに尽きます。

【3】それでも英文日記を勧める理由

この転機となった友人との会話,妄想ひとり会話の延長として,暇さえあればそれを英語で書き出し,見直し,ああでもないこうでもないとまた書き直していました。いつも自分が考えている内容ですから,言ってみればただの英文日記です。しかしこれもまた非常に効きました。これがみっつめです。

よく,英文日記は自分の表現があっているかどうかがわからない,間違えた表現をそのまま覚えてしまう可能性があるから教材などを覚えるべきだ,という意見があります。その点は充分に理解しつつ,それでも私は英文日記を強く勧めます。何故なら重要なのは出来上がった英文自体ではなく,あれこれ考える過程だからです。

実際始めの頃なんてどれだけ考えても大した答えは出ないんです。適当に辞書アプリやネットを使いながら考えていましたが,それでも。だから何か具体的に新しい表現が身についたわけではありません。しかし常に頭の片隅に『こういう時,英語ではなんていうんだろう』という疑問があることで,ふとした拍子に思いついたり,近い表現に出会った時のアンテナがとても鋭くなるんです。

【なぜ効いたのか】カラーバス効果が効いていたこと

妄想ひとり会話でも英文日記でもそうなのですが,この,常にアンテナが張り巡らされている状態を作ることは本当に重要です。

いざ英語にしようとすると自分の考えのあやふやなところに気づく。そしてあれこれ思考を整理しながら,英語にしようと考える。おそらく,初めはすんなりとはいかないはずです。しかしその疑問を,常に頭の片隅に置いておいて欲しいのです。

例えば,この『その疑問を,常に頭の片隅にに置いておいて欲しい』という表現がどうしても英語にできなかったとします。そうすると,あなたの頭の片隅には無意識ですが常に『あれは英語でなんていうんだろう』という小さな疑問符が浮かんでいる状態になります。

その状態で生きていると,例えば本や教材や街中などで近い表現に出会った時,一気に『これか!』と反応できるようになります。そのため,たとえはじめに作った文章が間違えていても,最終的に正解に辿り着けるスピードが格段に上がります。ちなみにこれはカラーバス効果として知られており,次回じっくり深掘りします。

そして次の扉が開ける

今回は英語が苦手だった私が初学者の頃に特に効いたこととして,①転機となった友人との会話,②妄想ひとり会話,そして③英文日記についてお話しました。如何でしたか?継続がモノをいうようなものは何事も,目の前の段階をひとつクリアすると自然と次の扉が見えてくるようなところがあります。英語も同じです。

はじめは限られた分野であっても,その範囲で書く,聞く,話す経験を重ねていくことで英語力自体も向上し,自然と次のステップが見えてきます。もう少し広い範囲で英語を使えるようになったり,自然と外国人のお友だちが増えてきたり。私はその結果,会議通訳となりました。その第一歩として,まず今あなたの頭にあることを英語で表現できるようにしてみませんか?きっと世界が広がると思います。一緒に頑張りましょう,Bon Voyage!